マイペンランちゃん

覚悟を決めて電話に出た。

『もしもし・・・。』

蜂子のテンションは高く、日本語で来た。

というもの、蜂子は日本語は殆ど出来ない。

僕の知っている限りでは、『もしもし。』しか話せないような・・・。



隣にエルさんが居るので、僕はいかにも日本人の友達から電話が来たように・・・。

『もしもし・・・。へぇ～、そうなんだ・・・。』


蜂子の話とか全く聞かず、一方的に日本語を話し続ける。


電話の向こうの蜂子は、

『ラン何言ってるの？今何処に居るの！？』


そんな質問は無視して、更に日本語で一方的に話し続ける。


『ラン！誰からなの！？』

『誰だか分からない。』

『男？オンナ？』

『オンナだけど。』

『日本人なの？？』

『・・・・・。』


僕が日本語で話しているから、そりゃエルは日本人からって思いますよね・・・。



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一瞬何て答えようか考えたけど、考えても日本語で話し続けている今、どっちが正解か分からず、焦った僕は思わず電話を切ってしまった・・・。



『ラン、誰だったの？？』

『うん。誰だか分からない。何言ってるのかも分からない。』


苦し過ぎる言い訳・・・。


が、再び携帯が鳴る・・・。


直ぐに電話に出る。


エルにバレないよう何とかこの場をしのがなければ・・・。


もう一度さっきと同じ作戦。

一方的に日本語で話す作戦。

一方的に日本語で話して、『うん。うん。分かった。』と言って電話を切った。

電話を切ったはずだった。



自分から招いているのか・・・。

自分で自分のクビを締めるのが好きなのか・・・。

鈍臭い僕・・・。

オバカな僕・・・。



携帯電話の『切る』ボタンと『スピーカー』ボタンを押し間違えたみたい。


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僕の携帯はNOKIA。

NOKIA携帯を使っている人なら分かってくれるはず・・・。

この押し間違えはよくある。

いやいや、あんまりないかな・・・？

この二つのボタンは直ぐ隣同士にあって、隣同士というか、斜め上というか、ほぼ同じボタンになっている。

スライドさせて切ればよかったけど、とっさボタンを押してしまった・・・。



携帯電話からスピーカー音声で響き渡る蜂子の



『もしもし～！』



エルの顔色が変わる。


自分で蒔いた種は自分で収穫しなければ！！



『エル、誰だか分からないよ。』


いかにも、僕は今あえてスピーカーにしましたよ。押し間違えたんじゃないですよ。という態度で、堂々とエルに携帯電話を渡した。



エルは僕の携帯に出ると、タイ語で『アナタはタイ人？』と質問。


ビビったのか・・・、機転を利かせたのか・・・、は分からないけど、蜂子が電話を切った。


いやいや危なかった・・・。


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強気に出た事が、今回の勝利を生んだ。


エルは勿論電話を掛け直そうとするけど、電話を掛け直す事は出来ない・・・。

ホントは出来るけど、出来ない・・・。

蜂子を、いや、ランさんガールズを信用していない僕は、蜂子の電話番号を携帯に登録する時、蜂子の名前を


Private number


と入力していた。


なので、着信履歴にはPrivate numberと表示されていて、掛け直せば蜂子に繋がるけど、普通は掛け直さない。


へへへっ！！完全に僕の勝利である！！


『誰からだったんだろうね？』


と自然で強気な一言を言って、携帯電話を堂々と机に置いて、シャワーを浴びる。



けど、次の日、携帯電話を見に行った事は言うまでもない・・・。



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つづく




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